和田政宗が移民政策でないという移民政策が、想像以上に移民政策だった件
残念ながら、自民党が移民政策を開始しました。
安倍晋三ファンを自認する自分ですが、この件はいつかは来るだろう、たとえ支持者であっても反対の声を上げなければならないと考えていました。
ついにその時が来たといったところでしょうか。
元日本のこころ、現自民党の和田政宗議員が「入国管理法の改正案は移民政策ではない」という趣旨の記事を出しました。
内容を見ましたが、これはあまりにもひどいと思い、思わず筆を取った次第です。
和田議員にはこの法案に反対してくれることを期待していましたが、非常に残念です。
1.自民党が決めた移民の定義に当てはまらないから、「移民政策に当たらない」
「移民」と聞いて想定するのは、例えば、永住権を得てアメリカに移住するように、当初から、その国でずっと滞在することを前提に家族も含めて生活の根拠を移す者であり、自民党の特命委員会でも「移民とは、入国の時点でいわゆる永住権を有する者」と定義し、「就労目的の在留資格による受入れは「移民」には当たらない」と整理されています。
「入国の時点でいわゆる永住権を有する者」なんて、何を勝手に移民の定義を作っているのでしょうか。この時点でもはや自民党の移民政策に対して信頼がまったく置けなくなります。
そもそも自身が「その国でずっと滞在することを前提に家族も含めて生活の根拠を移す者」と移民のイメージを語っているではないですか。なぜその定義に従わないのでしょう?
2.永住権どころか、国籍の大安売りである
また、新たな制度で大部分を占める「特定技能1号」については、受け入れる在留期間は通算5年であり、期限を設けず受け入れるものではなく、移民には該当しません。
技能実習と合わせても日本への在留は最長10年間です。
そして、連続5年を超えると国籍取得要件を満たすので、5年を超える前に一旦帰国いただき、再来日してもらう制度となっています。
では実際「家族も含めて生活の根拠を移す」という点はどうなっているのでしょうか?
和田議員の説明では「在留期間は通算5年」「連続5年を超えると国籍取得要件を満たす」とあります。
後述しますが、特定技能1号は簡単に言えば単純労働者の大量受け入れです。そしてその受け入れ条件は日本語が喋れる程度でしかありません。
どんな国のどんな人でもカタコトで日本語が喋れば、5年間3K仕事に耐えることで日本国籍が得られてしまう。
永住権ですら飛び越えて国籍取得です。これで「その国でずっと滞在することを前提に家族も含めて生活の根拠を移す者」では無いと言えるでしょうか?
3.職種の制限を一切廃止した、単純労働者の大量受け入れである
仮に、低賃金の外国人労働者を何の制約もなく受け入れる場合には、日本人の雇用が奪われる恐れがあります。しかし、今回の制度はそのような制度ではありません。
人手不足が深刻な業種・分野に限って、外国人材を受け入れるものです。
さらに、人手不足かどうかを判断するに当たっては、有効求人倍率や各業種における統計等の客観的な指標を用いて判断します。
現在の外国人労働者の受け入れは、基本的に職種の制限があります。
高度人材というか、要は高給取りの職種だけで単純労働についてはNGとしてきたのですね。
「人手不足が深刻な業種・分野に限って」ということは、裏を返せば『人手不足』でありさえすれば、職種の制限なく外国人を雇えるということになります。
そして『人手不足』が解消されたとされるまで、人数の制限もなく受け入れすることになるでしょう。
この移民政策が行われれば、職種の制限、人数の制限は全て撤廃されるということです。
4.低賃金労働を移民に強いるものである。
加えて、受け入れる外国人労働者については、日本人と同等か同等以上の報酬を支払わなければならず、低賃金の外国人労働者を無制約に受け入れるものでは全くありません。
人手不足になるような業界は、そもそも賃金が低くて日本人が寄り付かない場合が多いのです。
「日本人の報酬」がそもそも低いのに、「日本人と同等か同等以上の報酬」に何の意味があるでしょうか。
本来であれば人手不足を逆にエネルギーにして業界の改革が行われなければならないのに、低賃金の外国人労働者のマンパワーで乗り切ってしまうことになるし、なによりその業界で踏ん張ってきた日本人に未来がなくなります。
結論.想像以上の移民政策である
移民政策をやるよと聞いたとき、安倍政権のことだからシンガポールなんかを参考に厳格な運用を導入して、よりコントロールが効く形に落としてくれるだろうという信頼がありましたが、見事に打ち砕かれた形です。
少なくとも和田議員の説明を聞く限り、自分が懸念している「低賃金労働者の子供が日本に永住する」という点に、歯止めになるようなものは何もない。
自分は移民のことをよく「労働奴隷」と呼称しますが、移民でもっとも問題になるのはこの「労働奴隷の子供」なのです。
実は1世はそこまで問題になりません。貧しい母国に帰るよりはと真面目に働いてくれるでしょう。しかしその子供は?
彼らは日本で生まれ日本で育ちます。我々とまったく変わらない存在なのです。
その彼らにも「親の後を継いで奴隷として働け」と言えますか?そんなことはできるわけがない。
親は貧しい。これで教育も与えられなければ社会の下層から抜け出すことは難しいでしょう。そうなれば、社会に対して恨みを持つようになる。
アメリカやEUでは、これが「ホームグロウンテロ」の基盤になっています。
では教育を与えて彼らを日本人と同等になるように引き上げようとしたら、その社会保障費はいったいどれほどになるでしょうか。